[コラム]第九十銀行の銘板は、渋沢栄一氏の揮毫
もりおか啄木・賢治青春館正面玄関の上部(屋根の下)にある横書きの銘板「株式會社第九十銀行」は、新しい一万円札「渋沢栄一」氏の揮毫である。
元々、その位置に、どんな銘板があったのかは確認されていないが、平成13年の改修工事の際、銘板はなかった。調査及び改修設計を担当した渡辺敏男さん(故人)は、銀行の合併等により「銘板」は取り外されていたのではと述懐していた。改修工事竣工後に第九十銀行頭取だった佐々木卯太郎氏の旧家で、「株式會社第九十銀行」という渋沢氏筆による題字(巻物)が発見され、渡辺氏はこれが銘板の元、あるいは銘板にしようと思ったかもしれないと推測し、もりおか啄木・賢治青春館開館に合わせて、この題字による新しい銘板を作成し設置した。
題字の写真は「旧第九十銀行本店 保存・修理・活用工事報告書」に掲載されている。
ちなみに渋沢氏は、盛岡が大洪水にあった後、第九十銀行本店落成前の明治43年に盛岡を訪れているという。銀行に立ち寄ったかどうかは不明だが、完成間近な第九十銀行を見て、洪水のお見舞いも含め、銘板を揮毫したとも考えられる。また、本店竣工前の明治40年2月1日には「第九十銀行村井、小野外二人来話ス」(渋沢日記)とあり、その際に依頼され揮毫に至ったのかもしれない。
大正時代の九十銀行の写真や渋沢氏の盛岡行程など、より精度の高い資料があればありがたい。盛岡の金融界と渋沢氏の交流も調べてみたいものだ。